あとがき
・・・こうして四国八十八ヶ所巡礼の旅は終わった。
親父との約束を果たすことが出来たわけだが、考えてみると途中からなにかをわたしに託すのは親父の得意技だったような気がする。
富士山登山で八合目まで行き天候不順で引き返した後、八合目までの焼き印が押された杖を渡されて「あとはお前がやれ」と言われたことがある。
その後わたしは友人と富士山に登り山頂小屋までの焼き印を杖に押して持ち帰った。
その杖を見た親父の嬉しそうな顔をよく覚えている。
今回の納経帳を親父に見せてやることが出来ないのは残念だ。
今思えば、旅のきっかけを与えてもらっていたわけで、空白だらけの納経帳がなければ四国巡礼など行く機会が一生なかったかもしれない。
旅は見識を広げる。
知識として持っているものを、実際に見て確かめるのが「見識の旅」だ。
そういう機会を与えてくれた親父に感謝している・・・。

・・・さて、今回はふつうの旅と違い、少々宗教色が濃いと思われる方も多いと思う。
しかし、真言宗への勧誘や仏教への帰依のお勧めをするつもりは全くない。(わたし自身正式な門徒ではない)
わたしにとって弘法大師は、子供の頃は法力をもって妖怪と闘い、人々を救うスーパーヒーローだった。
大人になってからは、あらためてその教えの深さに感銘した。
だから真言宗の信者というより、弘法大師のファンと言った方が正しい。
こんなことを書くと不謹慎かもしれないが、四国巡礼は映画のロケ地を訪ねるような、わくわくした旅なのだ。
そしてファンは誰よりも真剣なので、まじめに作法を守ってお参りする・・・それだけのことなのだ。
機会があれば、また弘法大師にお会いしに行きたい。