プロローグ 
 
 
「・・・残るは北海道 最西端 尾花岬」

このセリフをこのサイトの旅日記で何度書いたことだろう
そこは行きたくても行けない場所
遠くから眺めることは出来ても近づけない場所だった
なにしろそこに至る道路がないのだから・・・
多くの旅人がその道路が完成するのを待っていた
道道740号線 北檜山大成線
ここはもう30年近く工事が行われていながら、未だに開通しない難所中の難所なのだ
断崖絶壁が続き、日本海の猛烈な波風に晒されるこの地の工事は遅れに遅れた
他の「端っこ」をすべて周ったわたしとトッポBJもただ待つしかなかった
それはいつ終わるともわからない、長い待機期間だった
ネットで情報を取るたぴに落胆のため息をつく日々が続いた

その日は突然にやって来た
ひさしぶりにネットで情報を取ると、檜山振興局新幹線観光対策室のサイトに道道740号線の未開通部分が2013年4月24日に開通したとの記事が載っていた
ネットの記事を見てこんなに驚いた瞬間はこれまでになかった
そして、ネットの情報のすべてが決してリアルタイムでも、あらゆる情報が載るわけでもないということを思い知った
記事には開通部分の地図と、尾花岬付近にあたる場所の写真も掲載されていた
サイトの日付は2013年5月16日
「斜め端っこの旅」から帰ってわずか4日後だった
なんということだ・・・もっと情報が早ければ「斜め端っこ」なんか行ってる場合ではなかったのに!
が、「斜め端っこの旅」の前の計画段階でも尾花岬への道の情報を取っている
しかし、この時点ではネット上の検索に引っかからなかったようだ

こうなったら行くしかない
でないといつまでも完結しない自分の始めた旅を悶々と引きずり続けることになる
資金はなく、体調も万全とは言えないが、ここで行かなければ多分一生後悔するだろう
もちろん、尾花岬そのものに行く道が出来たわけではない
あまりに険しい地形なので人間が近づくのは困難な場所なのだ
その間近を通る道が出来たというだけのはなしだ
尾花岬を遠く眺める場所までの道は以前から開通していた
眺めるだけなら待つ必要は無かったのだ
そこにわたしの「端っこの旅」のこだわりがある
岬自体にたどり着けなくても、そこを通る道があることが肝心なのだ
そして、できる限り接近する
最低でも2km以内
それが「端っこの旅」の到達認定ルールだ
そこを曲げて妥協したのでは、これまでの「端っこの旅」が無意味なタダの岬巡りになってしまう
自分で始めた旅は、自分で決めたルールを守り切って完結させたい
そんな旅に取り憑かれた男と、不幸にもそんな男がオーナーになった哀れな軽自動車の
最期の旅が始まるのだ

旅の終わりを求めて、旅人はまた新たなる旅に出る

この一説も何度ここで書いたことか
しかし、今度こそ「旅の終わりを求めて」旅に出る時が来るのだ