四日目 2008.5.25 千歳→陸上自衛隊東千歳駐屯地→札幌(寄り道あり)
2008年5月25日
ホテルで朝食
午前6時45分 出発
今にも泣き出しそうな天気だ

午前7時6分
東千歳駐屯地前に到着
ちょうど隊員たちの出勤時間だ

WAC(婦人自衛官)が配ってくれた
日程表によると
午前8時の開場になっている
門の外で一時間
じっと待たされる・・・
自衛隊は時間に正確なのだ

小雨の降り始めた
午前8時
課業開始のラッパとともに開場
駐屯地内の臨時駐車場に停める
さっそく懐かしい建物が見えてきた

隊員クラブ「時計台」

隊員クラブとは駐屯地内で唯一
飲酒が認められている居酒屋の
ような施設だ

ここでジンギスカンで宴会したり
他の部隊と大乱闘になったりと
いろんな意味で思い出深いw
これは通称「かまぼこ隊舎」

元々進駐軍が建てたものだ
雪に強く暖房効率がいい
まだ使われてたんだなぁw

わたしも同期の仲間達とここに泊り込んで
仕事をしたことがある

毎日が修学旅行みたいで楽しかったw
式典にはまだ時間があるので
人が多くならないうちに
装備展示のコーナーに向かう

日本の主力戦車90式
通称「キューマル」
やわらか戦車のキューマル先輩のホンモノだw
性能上の数値的なものはこちらを
ご参照下さい
陸上自衛隊 装備

アメリカのM-1戦車にもひけをとらない
世界レベルの高性能戦車
特に走りながら射撃する
行進間射撃の命中精度が世界一!
ついでに値段も世界一!!w
その性能を生涯発揮することが
ないことを祈りたいですね・・・・

87式自走高射機関砲

戦車部隊と一緒に行動して
戦車を狙ってくるヘリや航空機を
レーダーで探知
35mm機関砲で撃ち落す
最近はヘリなどが積んでいる
ミサイルに射程距離で負けている
いつかはミサイル装備と機関砲の
ハイブリッドになるだろう
元歩兵の立場から言わせてもらうと
こいつの水平射撃は
ある意味戦車より恐ろしい

通称「ガンタンク」

砲塔をぐるぐる回して射撃姿勢の実演
後ろのアンテナが索敵用レーダーで
稼動中は常にくるくる回っている

その前のパラボラアンテナが射撃管制レーダー
電波を出して敵機との距離などを正確に測る

しかし電波を出すと逆探知されて相手に位置を
知られてしまう可能性がある

現代戦はハイテク戦で無線電話も約7秒電波を出せば
発信地点を探知されてしまう
だから無線を使うときは約3秒で電波を途切れさせて
探知されないように訓練する
某戦争ドラマのごとく
「チェックメイトキング こちらホワイトルーク どうぞ」
などと長々としゃべっていると
たちまち砲撃を食らうイヤな時代だ・・・・

89式装甲戦闘車

その名のごとくの戦闘車輌
車体後部に普通科隊員(歩兵)を乗せ
機関銃 機関砲 誘導弾(ミサイル)で武装

第7師団の第11普通科連隊だけに
配備されているレアでマッチョなヤツ

わたしはこいつの試作車のテストに
ダミー人形役として参加
(衝突実験をやったわけではないw)
そこで見聞きした内容については
長い間緘口令を敷かれていた
生涯ただ一度だけ触れる事のできた
「防衛機密」だ
車体横の丸いものはガンポート
車内から小銃を射撃するときにここから
銃身を出して上のペリスコープから
覗きながら射撃を行う

砲塔の四角い箱が誘導弾の発射機
その前に斜めについてる四本の筒は
煙幕弾の発射機

キャタピラを半分覆っているのは
「スカート」と呼ばれる防弾板
戦闘車輌の証だ

エンジンが前についているので
正面から被弾したときの乗員の生存率も高い

73式装甲車

現役時代はもっぱらこいつに乗っていた
一個分隊がまるごと乗車できるので
移動する分隊基地のようなものだった

向かって右側の機銃座に座るのが好きで
ハッチを開けたまま夏も冬もここに座って
広大な演習場の風景を眺めていた
吹きっさらしで寒いので好んでここに
座る人はいなかったなぁ・・・

ちなみに冬は顔が凍傷になるので
皮のマスクをつけて乗っていた



演習に出ると機動部隊なので
状況開始(演習本番スタート)になった後は
テントなどを使わず車内で寝泊りする

冬は暖房装置がないので中でストーブを焚き
ローソクを灯して座ったまま寝る
ローソクが消えたら酸欠状態なので
ハッチを開けて換気する
外は-17℃の世界


酸欠死と凍死のわずかな狭間で生きている
それが冬の演習だった
90式戦車の排土板付き

前主力戦車の74式にも
排土板(ブルドーザーの前についてる板)が
ついたものが存在する
これがあるといろいろ便利だ
道を均したり 水を掻き出したり・・・

しかし湾岸戦争では
排土板を付けたアメリカの戦車が
塹壕に立て篭もるイラク兵を
どんどん生き埋めにして突破したそうだ
ただの鉄の板も使い方次第で
大砲より効率的な戦場の凶器となる・・・
91式戦車橋
戦車壕(戦車が通れないように掘った穴)に
橋を架けて通れるようにする機材
施設部隊の車輌

災害時 橋が落ちたときなどにも使える
50tの戦車が通れる橋なのでとても頑丈だ

戦車が新しくなるたびに重量が増えるので
戦車橋もそのたびに大きくなっていったw

92式地雷原処理車
後ろの箱からロケットを発射し
飛行中のロケットの後部から
ワイヤーに数珠繋ぎになった爆薬を展開
地雷原に落ち地雷を誘爆させて
地雷原に安全に通れる道を作る機材

地雷処理は昔から施設科(工兵)の仕事
なのだ

今回はこのあと行われた
模擬戦の時にロケットの発射実演(爆薬なし)が
あり観客から歓声が上がっていた

爆発しなければただのでっかいロケット花火だw
99式155mm自走榴弾砲

平たく言うと自分で移動できる大砲
新型は砲身が長くなり射程距離が伸びた
愛称もそのまんま「ロングノーズ」

特科(砲兵)というと重い砲弾を担いで運んだり
しているイメージがあって
肉体労働のように思われるが
実は緻密な計算能力が不可欠で
数学がきっちりできないと勤まらない
インテリジェンスの高い兵科だ



75式自走155mm榴弾砲

現役時代に主力だった自走砲
99式と比べると砲身が短い

陸上自衛隊は新装備を北海道に集中配備
する傾向があるので
内地にはなかなか自走砲は回ってこない
203mm自走榴弾砲

陸上自衛隊最大の火砲
203mmというと昔の巡洋艦の主砲並だ

愛称「サンダーボルト」
それこそ雷が間近に落ちたような
バカでっかい発射音がする
軽装甲機動車

PKOなどに使われている装甲車

現代では非装甲のジープやトラックに乗って
戦闘地域をうろつくのは自殺行為だ
だからこういう小さな車輌も装甲板を身に纏う

軽装甲機動車の運転席

ミッションはオートマチックだ
ふつうのクルマとまったく変わらない
オフロードを本気で走るなら
マニュアルミッションが有利だが
「非常時にだれでも運転できる」のは軍用車輌の
第一条件だし、性能的にもマニュアルミッションに
引けをとらないイマドキのオートマなので
問題ないのだろう

ちなみに戦車や装甲車もオートマチック
ごっついホイール

こっちはばね下加重を軽くしようと
アルミホイールやジュラルミンのナットにせっせと
取り替えてるというのに・・・

こいつはテッチン(鉄製ホイール)どころか
装甲鋼板ホイールだ
かなり重いに違いない

・・・タイヤも防弾だったりするのかな?


96式自走120mm迫撃砲

迫撃砲は筒の上から砲弾を入れて発射する
歩兵が持ち歩けるサイズの火砲

戦争映画とかでよく出てくるよね

しかし撃ってその場でもたもたしてると
敵に撃ち返されてやられてしまうので
迫撃砲といえど高い機動力を持たせてある

昔はリヤカーに載せて運んでいたw

74式戦車

90式が主力戦車ということになっているが
90式は北海道に集中配備されていて
本州以南はこの74式が実質の主力戦車だ
数の上でも74式が圧倒的に多い

映画やテレビ番組では
怪獣たちに踏み潰されながら戦い抜いたw

わたしは「戦車」というとこいつだ
空冷2サイクルターボディーゼルエンジン独特の
甲高い音を聞いているとあの頃を思い出す

広島の部隊にも配備されているが
北海道の別海の部隊で使っていたものの
お下がりだそうだw

87式偵察警戒車

日本は道路が整備されているので
装軌(キャタピラ)よりも装輪(タイヤ)のほうが
高速で移動できることが多い

また装軌車は長距離移動するときに
トランスポーターに乗せたり
時には分解したりして運ばなければならないが
装輪であれば高速道路だって
自走で移動できる
(しかもきっちり法定速度が出るように設計されているw)

日本の国情にマッチした車輌だ
大人気の戦車試乗

乗り場前には長い行列ができていた
乗るときは全員ヘルメット着用
乗ってみると非常に乗り心地が良いので
みなさん驚かれるw

試乗すると「試乗証明書」という
90式に乗ったことを証明するカードをくれる

自衛隊もなかなか客引きがうまくなったなw

観客の歓声から少し遠ざかり
懐かしい場所に足を向ける

ここはわたしが2年間すごした
第十一普通科連隊の隊舎だ

三階建てで屋根裏は巨大な倉庫になっている
全館スチーム暖房(蒸気を鉄管に流して暖める)
雪国独特の乾燥室(洗濯物を乾かす部屋)や
スキー庫もある

若かったなぁ あの頃は・・・
高卒の世間知らずのガキが
勢いだけで北海道の部隊に来ちゃったもんなぁw

訓練は厳しかったけど
毎日が生きている実感に溢れていた 

正面玄関

部隊章の傍に「旧シンボルマーク」と
書かれた看板がある

このマークの頃 現役だったんだよね・・・

写真右端の木に隠れている1階の窓の部屋が
わたしのいた第1中隊第2班だ
1部屋11人の生活だったなぁ

今ではとても耐えられないだろうw
我が第1中隊の集合場所だったところ
体操したり 雪かきしたり 怒られて
腕立て伏せやらされたり ・・・・w

退職したときもあの1階のドアから仲間達に
見送られて出て行ったんだよなぁ・・・
先輩も 同期も 後輩も 
みんな良い人たちばかりだった

あの頃の仲間達はどうしてるだろう・・・

そんなことを考えていると
なんだか涙がにじんできた・・・

たしかにここに
わたしの青春がある・・・

さて
思い出話につきあわせて
申し訳ないw

再び歩き出すと隊舎の傍に
昔はなかった施設があった

この小汚いベニヤ板の林立
なんだかおわかりだろうか?
これは市街戦を想定した訓練施設

戦争の形態が国VS国から
対テロ戦争に変化した昨今
それまでの大規模な野戦にかわり
市街戦や人質救出などの屋内戦闘が
重視されるようになった

機甲部隊がこのような訓練をしなければならないとは
ある意味皮肉なものだ

今なぜか流行ってるミリめしの展示コーナー
はっきり言うけど
ミリめしは一般人にはヘルシーとは言えない

戦闘という過酷な状況で
短時間に確実な栄養補給をするのが
目的なので栄養のバランスは良いが
塩分や糖分も多いし当然カロリーも高い
運動量の多い自衛官が食べるからこそ
ヘルシーといえるのだ
ちなみに自衛官の一日の摂取量は
4200キロカロリー(現役当時)

缶詰の中には旨いものもあるが
炊事班の作ってくれる「温食」には適いません

隊員さんたちの書画 陶芸 絵画などの
作品を展示したコーナー

なかなかの力作ぞろいだが・・・

中に気になる作品が・・・・
・・・ヲィ

萌」もだが

「冬のソナタって・・・・

・・・明らかに「冬の・・・」まで書いて
後で「・・・ソナタ」って書き足しただろ!w
駐屯地内には博物館もある
野外展示品の中にはいくつか貴重なものもある

これは自走無反動砲の試作車
四連装ですぜ だんな!
なんだかSFチックでおもしろい


そのほかにも試作車輌が数台展示されている

前は旧海軍の「大発」も置かれていたが
今回は見かけなかった
61式戦車

74式戦車の前の主力戦車
戦後初の国産戦車でもある

わたしが千歳に配属になった頃には
すでに退役して
射撃場の標的になっていたが 
広島に帰って近所の部隊へ行くと
バリバリの現役だったw

この戦車も空想科学の世界では
怪獣や宇宙人相手に戦い抜いたw

ギアチェンジが難しいので
「世界一操縦の難しい戦車」と言われているらしい
61式戦車の前は
このM-24軽戦車が主力だった

映画「レマゲン鉄橋」にも登場する
第二次世界大戦のころのアメリカの戦車だ

こんなのに体がでかいアメリカ人が入るのか?
と思うくらい中は狭い・・・・

旧陸軍の滑走路だった広大な空き地で
記念式典が始まる

参加した装甲車輌400両の前に
整列する隊員たち

「向こう側」で参加すると
長々と立ってるだけなのでつまらないが
「こっち側」から見ると立ってる姿も壮観なものだ

なんでも見てるだけの立場は楽でいいw
行進を開始する90式戦車
50tもある鉄の塊が怒涛の勢いで走る!

74式戦車に比べるとエンジン音は静かだが
意外と排気ガスが濃くて灰色の煙が上がる

戦闘になると排気ガスが目立って
敵に発見されるんじゃないかと
余計な心配をしてみる
一糸乱れぬ行進を見せる90式戦車
ゴウゴウと地響きが続く

ああ、傘が邪魔だー!w
パレードの後に行われた模擬戦

進出してきた敵戦車部隊を撃退するという
ストーリー

特科の99式155mm自走砲の一斉射撃
もちろん空砲だがひときわ大きな音がして
観客をビビらせていた・・・
模擬戦 最終場面

煙幕弾の一斉展張とか例の地雷処理ロケットとか
派手なパフォーマンスの後
突入した我が戦車隊と敵戦車隊との
激しい撃ち合いが続く

ちなみに90式戦車は搭載している大砲の
構造上 空砲を撃つことができないので
発砲しているのは74式戦車だ

この後隊内をもう一回りして
PX(売店)で迷彩服の上衣と帽子を買う
それを着て駐車場まで歩いていたら現役の隊員と
間違えられてたくさんの一般人に道を聞かれる
勝手知ったる古巣のため、てきぱきと答えてしまったw

正午 駐車場を出発

今日の宿泊地札幌に向かう

千歳から札幌はそう遠くない
時間もあるので寄り道をする

午後1時20分
羊ヶ丘展望台に到着
入場料500円

ここで今回
「絶対撮りたかった写真」を撮ることに成功

クラーク先生と一緒に写れば
軽自動車で北海道に来たという確かな証拠に
なるだろうw
クラーク先生のむこうには札幌ドーム

日本ハムやコンサドーレの試合の中継は
いつもこのカットから入ってるような気がするなw
羊ヶ丘オーストリア館で
ラムまんを食う

かなり濃い味だ
ジンギスカンと肉まんを一緒に食ったような
妙な味・・・・でもこれはこれで「あり」だなw

同館の2階にはおみやげ物コーナーがあり
そこでご当地キューピーを何体か買う

観光地ではどこへ行ってもご当地キューピーと
ご当地キティちゃんが熱い火花を散らしているw
 
午後1時53分 出発

見えたからには行ってみたくなる

午後2時
札幌ドームに到着

近くで見るととてもでかい建物だ
長い長い通路を歩いて入り口に向かう
すばらしい造形美

来年広島にも新球場ができるが
こんな感じだといいなぁ・・・


ドーム内

グラウンドはスライド式に動き
野球場からサッカー場に変身する


屋根があるので写真では狭そうに見えるが
ダイヤモンドの大きさと
ファールグラウンドの広さをご覧いただければ
その大きさがお分かりになるだろう
展望台へのエスカレーター
全長60m とても長い・・・

角度も急で下りは結構スリリングw


展望台
これまた造形が美しい

地上53m
さきほど寄った羊ヶ丘や札幌市内が一望できる

展望台入場料 500円

午後2時45分 出発

午後3時15分
札幌グランドホテルに到着
ポーターさんが荷物を運んでくれて
料金後払いのホテルはひさしぶりだw
部屋番号 2804
窓から北海道庁旧本庁舎が見える

ホテルにある「ビッグジョッキ」という店に向かう
ここに「幻のたまねぎ」があるという
これが幻のたまねぎ「札幌黄」だ
札幌市民も滅多に口にできないという
超希少食材
身分にそぐわずグランドホテルに泊まったのは
ここに「札幌黄」を食べさせるレストランがあると
聞いたからだ
果肉が厚く なんともいえない不思議な食感
そしてとても甘い・・・・
サラダがうまいといううわさもあるが
今回はベイクドオニオンで頂いた
長ーいソーセージ
一本注文しようとしたらウェイトレスさんに
「おひとりでは長すぎますから」と言われて
ハーフサイズにした

・・・・ハーフサイズでよかった
長すぎる!ww
ビールも入ってほろ酔いになる

明日は札幌市内観光

北海道に2年近くもも住んでたくせに
どこも観光していなかったので
明日はその分を取り返そうw
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